『岳』を読んで、遭難したら人生終わったなと
- 作者: 石塚真一
- 出版社/メーカー: 小学館
- 発売日: 2005/04/26
- メディア: コミック
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ネタバレしてますよ〜。というより読んだ人向け。
かいつまんで言っちゃえば、山岳遭難救助のボランティアをしている三歩(さんぽ)という主人公の男がおりなす、救助を通してのドラマ。
作者の石塚真一氏(作画スタッフは熊谷誠人氏)は、実際に長年、山登っていたみたいなので素人の僕が読むと、ところどころのディテールに関心する。
さておき、気になるところが描かれてないのね。あえて描いてないのでしょうけど。
それは、遭難者の捜索費用はいくらかかるのかと、ボランティアである三歩がどうやってメシ食ってるか。つまり、お金に関わる話。で、ちょっと調べてみた。
まずは、マンガ内で、わずかにそれらについて記述されている場面を挙げてみる。
捜索費用に関しての記述は、4巻第6歩「警鐘?」。遭難者を見つけた三歩は、警察がヘリを飛ばせないと知り、民間のヘリを頼む。散歩は遭難者に「ねえ、二人の救助ヘリ。ちょっとお金がかかるけど、いいかな?」と尋ねる場面があるだけ。
次に三歩君の稼ぎについての記述は、3巻第5歩「押し花」。クライミングジムでルートのセットアップをしている場面。くわしい記述はまったくないけど、これはボランティアというわけではなさそうなので、おそらくアルバイト。もうひとつは5巻第0歩「三歩の山」。デート中に高いワインを注文するのをためらう三歩に、ヒロインの久美が「ボランティアにも謝礼が出てるでしょ!!一件一件毎回。」と言うセリフ。
うーん、分からないね。
では実際、捜索費用とボランティアの収入はどうなっているのか。
救助ヘリの費用
警察のヘリが出動できれば無料。ただ、実質は
山での遭難救助の場合は特殊で、山の地理に詳しい民間のヘリコプターをチャーターしたり、地元の山岳会の方たちに捜索の助けをして貰う場合がほとんど
消防・防災ヘリは出動費用が税金ですから遭難者側の負担は消耗品程度の請求のみ。機内には救急車並みの医療器具も備えることが可能です。ただし公共のヘリコプターですから天候や山の遭難場所によっては無理に救助は行いませんし、山岳救助に長けた民間のパイロットのような高度な運転・収容・搬送技術が期待できません。怪我の症状が深刻で一刻も早い怪我人の搬送が望まれる場合は民間のヘリコプターに依頼するようになります。ということで、民間ヘリの料金。
八ヶ岳の山小屋などでは事故の一報が現場からもたらされると「民間ヘリしか呼ばない」と当事者や事故関係者に伝えるそうです。迅速に救助をするのならこれがベストだからでしょう。
遭難救助や捜索活動1時間あたりの額とあるが、これはおかしい。実際の目安は70万/時間ほどである。チャーター料と空輸料は重複しないはずだ*1。まあどちらにしても「ちょっと」じゃないよね。家庭がひっくり返ります。しかも、あくまで一時間単位の値段*2。
滞留・夜間滞留などを考慮しない場合でも、チャーター料+空輸料+スタンバイ料の合計で127万9,400円かかる計算になります。
ヘリを使わない場合の費用
上記サイトより拝借。
三歩くんはどうやって糊口をしのいでるのかという問いへの、ひとまずの答えも見つかった。
この中で、遭対協である三歩くんのふところに入るのは、隊員出動手当と(冬なら冬期危険手当と、もしかしたら指揮者手当)、そして謝礼。
ただ、この謝礼というのは関係者に支払われると記述されているので、もらえるとは限らない。このことから、久美の言う謝礼というのは、隊員出動手当と、同上者の冬期危険手当ではないだろうか*3。つまり一件30000円(+10000円)+α。実費込。北アルプスの年間の遭難件数が97件、一ヶ月あたり9件*4。全件救助したとしても27万〜36万+α。もちろんすべてに参加は不可能だから・・・
三歩が高級ワインを断ったのもうしょうがない*5。